カナアンの主神。神々の審判者。
バールとは「支配者」の意味。元はウガリットの嵐の神バール・ハダド Baal Hadad であったものが、やがては「宇宙の支配者」となった。
ビブロスではバールはバール・シャメム Baal Shamem 、すなわち「天空の支配者」と呼ばれ、彼らの「支配者」エルと区別された。
カルタゴでも、彼らの主神バール・ハンモン Baal Hammonと区別され、やはりバール・シャメムと呼ばれた。
レプ・バール Repu Baal 、すなわち「死霊たちの支配者」の名で、冥界の王としても知られる。祝福された死者の魂は、冥界に下り、バール・ハダドに食べられると信じられていた。だが、バールのレプ・バールとしての側面はティルスの主神メルカルト Melqarth 内容と同じである、とここではしておく。
あるときバールは狩りに出たが、それを愛と戦争の女神アナト Anath が付けてきた。バールは彼女に気づき、愛しくなって、牛の姿に変じて彼女と愛し合った。アナトは野牛を生み、そのことをザフォン山 Zaphon にいるバールに伝えた。
ギリシア人はバールをゼウスと、ローマ人はユピテルと同一視した。
彼は左手に稲妻を携え、右手に「投げても舞い戻る棍棒」を握った若い王として描かれる。
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