利益と交易
Profit & Trade
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf

 交易に関するゲームの諸要素をデザインするにあたって考慮すべき重要なアイデアの一つに、人々があるものと他のものを交換するのは、その人たちが自分たちが失うものよりも得るものの方が価値があると信じている、というものがある。言い換えれば、人々は利益の伴う交換を望んでおり、単純な交換のための交易はしない。利益は物質的な利益の獲得にとどまらずさまざまな形をとると考えられる。その良さを認める人にとって美術品はは、市場価格がいくらであろうと、購入価格以上に価値のあるものとなるだろう。寄進者は寄進によって確かな社会的地位を得られるかもしれないし、人々の好感も得るだろう。あるいは純粋に他人の幸福に喜びを見出しえるのかもしれない。こういったことはみな、それぞれに利益のかたちである。

 だからといって、つねに人々が交換条件に満足しているというわけではない。ゆりかご河流域で死ぬほど喉が渇いている人は、バイソン族から水を得るために手持ちの金属製品のすべてを手放すことを喜んではいないかもしれない。だが、その人が自分の商品よりも自分の命のほうが価値があると認めれば、その人は[結局は水と金属製品を]交換するだろう。誰その人がその取引を好んでいないといっても、それが「利益」を生まないことにはならないというのは重要なポイントである。記録も残っていない昔の世から、商人たちは適正な利益を得ながら、自分の支払った代価と受け取った対価について不満を言いつづけている。[だが、]外的要因(盗難や税金)がない場合、代価以上の対価の望めない交換は成立しえないのである。

 二地点において何らかの商品の交易が存在するかどうかを決定する際、次に挙げるいくつかの要因が考慮される:

供給
そこには生産余剰があるのか? 彼らはどれだけの対価を欲しているのか? 生産者はこの商品をつくるのに何が必要なのか?
 
需要
そこではその商品をどこか他のところに求めうるのか? そして、彼らは支払うため何らかの代価を持っているのか?
 
代替
その商品はその地方にある別のもので問題なく代替できるのか? もしあるなら、どうしてその地方の人々は代価を支払って舶来品を求めるのか? (プラックスの部族民は自分たちで革製品を作れるのに、それをサーター人から買うのはなぜか? もしそこにより優れた耐久性だとか魅力といったほかの要素がない、あるいはその差は値段で埋め合わせできるほどのものではないとしたなら、彼らはおそらく買わないだろう。)
 
費用
その商品はA地点からB地点まで移せるのか? もしそうなら、そうするためのコストはどれくらいかかるのか? ある有名な経済学者はかつて、地球と火星それぞれに個有の商品の市場があるならこれらは[交易で]結びつきうるが、それでもそこには少なくとも輸送コストから来る価格差が存するであろう、と言った。消費者が余分な費用を支払うかどうかが2点間の交易ルートが開拓されるかどうかを決することになるだろう。