マジックアイテム
Magic Goods
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf

 マジックアイテムは交易に関ては事情が込み入っている。すなわち価値が高く、かさばらず、非常に交易品として優れている。だが、これらの多くは広く用いられており、[長距離の]交易によって価値が増すということはない(言ってみれば、サーターからパヴィスへ輸出される青銅製品のようなものである)。神々の戦いが広範囲にわたって行われたため、魔漿石はどの地域でも利用されていると思われる。これらは地域内では交易されるが、地域間にわたって広く交易されるということはありえそうもない。

 真の石がプラックスで発見されて以来、真の石はマジックアイテムの[交易の]一般的傾向の例外となっている。プラックスから輸出された真の石はかなりの利益をもたらすが、これを扱える者(すなわち多神教徒)のみが引き取る。

 マジックアイテムを扱う商人のほとんどは地域的な市場に[商品を]供給することに専念していると思われる。イサリーズの商人は精霊魔術の呪付物をつくることが出来る者のところに行って(私はこれのためにグストブランのカルトを使っている)、例えば 《防護 IV》 の呪付された指輪を10個とかの、製作を彼らに依頼しているのかもしれない。こうした商人はこの指輪をこれが製作できず、需要を満たせないような地域(野営する軍隊のような)に持っていくのだろう。

 寺院が商用に神性魔術の呪付物を作ることはないし、魔道師のほとんども同様である(1)。これらの商品が市場にある場合、それは故買品である(たいていは暴力で奪われた)。精霊魔術の呪付物や魔漿石を商うのにも、商人には特別である必要があるのに、こういったものを買うことが出来る顧客は数が少ない、という問題がある。


  1.   ここではこのように述べながら、諸地域の主要な輸出入品のリストにはソッグ市のマジックアイテムや魔道書が挙げられている。
     ソッグ市のマジックアイテムについては、ソッグ市を治めるのがブリソス人であることから、彼らのような長命で深遠な知識を有する者のみが製作できるものを扱っているのだろう。
     一方魔道書に関しては、《切開》のような禁呪が載っているものは密輸品となりうるし、また西方語族は書き言葉が共通であることから、彼らが効率的な製本を行うことができれば(印刷術、とは言わないまでも、工場制手工業で写本をしているのかもしれない)、十分商品となりうるだろう。
     地球上では、プトレマイオス朝治下のアレクサンドリアの大図書館が精力的に書物を集めていたことが有名である。イスラム世界では、アッバース朝のカリフ亡き後、各国のスルタンは自らの統治の正当性をイスラム法学者に保証してもらうために、学院を建て、古今の書物を収集した。中国やヨーロッパで書物の売買が盛んになるのはやはり、印刷術の普及の後のことになるが、これを考えると、印刷術が普及する以前には、政治と学問が結びついてはじめて書物の売買が興る、といえるかもしれない。この点、書物から魔術が引き出せ、その魔術が軍事的成功や社会の発展に貢献するグローランサのマルキオン教世界では、書物の売買は興りえる、といえる。