グローランサの海流
Currents in Glorantha
 

 グローランサには南北に大陸があり、これらに挟まれて帰郷洋が横たわっている。帰郷洋の中央には「マガスタの渦」と呼ばれる、かつて混沌が穿った奈落へ通ずる大穴が開いており、帰郷洋の海水はみなここへ注ぎ込んで埋めがたい穴を埋めようとしている。「マガスタの渦」は反時計回りに渦を巻いている。
 帰郷洋には大きく分けて3つの海流があり、そのいずれもが「マガスタの渦」へ流れ込んでいる。北西のバンザ海からの流れを「デネストラザム Denestlazam 」、南東のトガロ洋からの流れを「セレラザム Serelazam 」、北東のカハール海からの流れを「セドラザム Sedlazam 」という。この3つの海流を横切ることは船乗りにとって至難の業であり、これらを「破滅の流れ」と呼ぶ向きもある。「デネストラザム」と「セレラザム」は大洋還流であり、どちらも主流は「マガスタの渦」へ流れ込むが、バンザ海からの流れはジルステラの陸塊によって一部分流して褐色海へ、トガロ洋からの流れはテレオスの陸塊によって分流してカハール海の方へ流れている。カハール海は何らかの障壁によって閉ざされており、暖流はカハール海を廻って東流する。この反流が「セドラザム」であり、クラロレラ沿岸を洗いながら「マガスタの渦」へ注ぎ込んでいる。「セドラザム」に引きずられて、ジェナーテラ南岸では海流は一般に東から西である。
 パマールテラにおいては、暖流が沖合いを流れる東部では熱帯性気候であり、寒流が沖合いを流れる西部では温帯性気候となっている。ジェナーテラでは、東部沖合いを流れる「セドラザム」が西部沖合いを流れる「デネストラザム」ほど冷たくはないので、気候は東部に行くほど暖かくなっている。「デネストラザム」はときにヴァリンド氷河から分離した氷山をはるかジルステラまで運んでくる。
 暖流と寒流の交わるセシュネラ南岸とクマンク諸島一帯はそれぞれ世界有数の漁場となっているだろう。カハール環流によって、クラロレラ東岸もよい漁場となっている。

Currents

 こうした温度差から来る海水の密度差や、「マガスタの渦」の吸引力といった物理的要件のほかに、グローランサには「スラマックの流れ」という、グローランサ世界の外側を周る流れがある。これは「海の父」ザーラマーカの肉体であると考えられている。この流れはグローランサ世界そのものを軸として反時計周りに回っており、したがってグローランサ世界の東端にはこの「スラマックの流れ」に引きずられた南から北へ流れる海流があり、西端にはやはり「スラマックの流れ」に引きずられた南から北へ流れる海流があることになる。
 これらの流れをそれぞれトガロ洋からの流れの支流、バンザ海からの流れの支流とあわせて考えると、ジェナーテラ・パマールテラの二大陸の東側の海のすべては南から北へ、西側の海のすべては北から南へと、流れていることになる。
 このようであるから、二大陸の東側の海の北端、西側の海の南端で堆積した海水はそれぞれ深層海流によって反流しているのだろうと考えられる。

 グローランサの南北の気温差は、ジェナーテラ大陸各地の主要作物のあり方から分かるとおり、かなり激しいが、これはグローランサの海流の寒暖ともに大部分が「マガスタの渦」に吸い込まれいることと、二大陸を囲む東西の海に大洋環流がないことから、大洋循環が地球ほど効率的ではないためかもしれない。