悟法
Mysticism
「悟法」ルールの RuneQuest 3rd への適用

悟法の概要

悟法とは何か

 ここでは、「悟り」とそこから得られる魔術を指して、「悟法」と呼んでいる。

 地球の主な宗教はその伝統のうちにみないわゆる「神秘体験」という現象が存在していた。この種の神秘体験の基本的な特徴は一定の修養を通じて得る一種の突発的で特殊な心理体験である。しかしそれぞれの宗教伝統において、この種の体験の内容とその解釈およびそれにともなって生じる感情の形式は全く同じというわけではない。例えばキリスト教の神秘体験の基本的な内容である「神との結合 (union with God) 」では、「体験」は人の内心において得るところの体得、感覚、イメージの組合せを指し、人が自己と神との巨大な格差を超越したと感じること、神と合わさって一つになることを指す。ヒンドゥー教の最高の境地は個体霊魂と宇宙最高の実在であるバラモンとの「梵我一如」に至る体験である。仏教の体験となると、前二者のキリスト教、ヒンドゥー教の体験どちらとも違っている。仏教の最高体験はいかなる最高実在 (supreme Being) にも導かれない上に、霊魂 (soul or atman) の存在も認めていない。いわゆる涅槃 (nirvana) といえば一種の高度な内心体験の境地であるが、自我と超越的存在の融合ではなく、霊魂の肉体からの脱却でもなく、一種の対を成す「空」の洞察と体験であり、「いかなる自分がある」という心霊状態をも克服したものである。
 これら宗教体験の差異にかかわらず、これらが「神秘主義」と一括りにされるのは、これらが、自己イコール全体の実在であると感得すること、一切の時間的・空間的差異を超越すること、永遠を感じることに到達すること、全く新しい世界観を獲得すること、言葉では言いえない大きな快楽であること、といった点で等しいためである。
 グローランサでの神秘体験の内容を描写する際、キリスト教はマルキオン教に、ヒンドゥー教は神教に、仏教はクラロレラの哲学に置き換えることができるだろう。

 神秘主義が自らを世界と一体化させようとして積極的に自らと世界との関係を測る試みであるのに対し、諦観は、主として大きな悲しみによって、受動的に世界との関係を「世界の一切が無価値である」として悟らされるものである。
 神秘主義と諦観のそれぞれ到達する先は等しく世界の本質である「あらゆる物を含みながら、そこには何もない」であり、両者の差異はコインの裏表でしかない。過程としては〈諦観〉の方が容易であるが、ときに〈神秘主義〉によってもたらされる「狂気」には救いがあるものの、〈諦観〉によってもたらされる「自殺」では魂も救われない。にもかかわらず、多くの神秘主義者が、道を誤って諦観の虚無に落ち込んでいった。

 〈神秘主義〉の「一切の時間的・空間的差異を超越する」という性格は、実際に神々の恩寵を戴く神教社会とは相容れない。神教社会において神秘主義は、神々の新しい恩寵を戴く(あるいは悪魔の誘惑を容れる)行為として受け入れられている、ということにする。
 また魔道社会では、〈神秘主義〉は「応用が利くが、完成されていない魔術」と見なされており、神秘主義は新たな呪式を開発する技術の1つとして受け入れられている、ということにする。(実際、ここでの悟法のルールは魔道のそれによく似ているが、修得はずっと困難なものになっているはずである。)
 悟法社会を含め、あらゆる社会で〈諦観〉を見出した者は憐憫され、社会に復帰させようとされる。


〈神秘主義〉 魔術分野 (00%)

 〈神秘主義〉の初期値は、何らかの形で「大悟」することで魔術修正値分の値を得る。
 「大悟」とは、あることをきっかけに「世界(他)」を認識し、さらに反ってそこにおける「自分(我)」を再発見することである。ゲーム的には、通常、何らかの技能値が 90% に達したときに「大悟」するが、生死の淵から引き返してくる、薬物を用いる、などおよそ我々が「人が変わる」と考えるような体験のすべてにおいて起こりうる。
 雰囲気的には「大悟」を引き起こす技能は〈瞑想〉や〈製作,書道〉がふさわしく思われるが、職人や農夫が哲学家になるような話はよく聞くし、戦士が哲学家になるケースも考えるなら〈1H剣攻撃〉も認めるべきかもしれない。だがこういう「有用な」技能を認めてしまうと、誰も〈瞑想〉しなくなるので、これは設定を練り直す必要がある(著者の独り言)。
 いったん「大悟」した後は、〈神秘主義〉は通常の研究・訓練で鍛えることができる。ただし研究の場合、100 から現在の〈神秘主義〉の値だけ、獲得した経験点が〈諦観〉の方に振り込まれる可能性がある。また、いったん「大悟」した後も、再び別の技能や体験で新たな「大悟」ができる。このときは、そのときの魔術修正値の値を〈神秘主義〉に加えること。

 〈神秘主義〉が〈哲学(何らか)〉の技能値を超えると、超えた値だけ毎週、精神に異常をきたす可能性がある。

 〈神秘主義〉は、《返術》・《禁術》の「強度」を高めるために使われる。ロールは同時に行い、技能値の値の低い方を基準にする。
 《返術》・《禁術》の「強度」を高めるために〈神秘主義〉を用いる場合、この経験によって〈神秘主義〉の値を上げることはできない(他の用い方では認められるかもしれない)。

 〈神秘主義〉には、人の琴線を震わせる力があり、〈読み書き〉と同時に用いて美しい文章を書いたり、〈雄弁〉と同時に用いて相手を感動させたりすることができる。
 〈神秘主義〉を知る者にとって精神の集中は容易であり、〈神秘主義〉の成功率以内で振られた〈攻撃〉は効果的成功となる。だが、〈神秘主義〉の効果的成功率以内で振られた〈攻撃〉が決定的成功となるわけではない。


〈諦観〉 魔術分野 (00%)

 〈諦観〉の初期値は、何らかの形で「絶望」することで得られる最大値と POW の現在値とで抵抗ロールを行い、所定の値を得る。
 「絶望」とは、あることをきっかけに「自分(我)」から「世界(他)」を切捨て、価値のないものとみなすことである。通常、近しい人の死や、拷問などが「絶望」を引き起こす。
 〈諦観〉は、さらなる「絶望」のほか、自らを追い込むことで意識的に得ることもできる(研究)。〈諦観〉を教える教師はいない。
 〈諦観〉は、「希望」、すなわち「世界(他)」があなたを引き止めてくれることで引き下げることができる。具体的には、愛されたり、あるいは単に名前を呼んでもらったり、ということである。「希望」もまた、何らかの形で「希望」をつかむことで得られる最大値と POW の現在値とで抵抗ロールを行い、所定の値を得る。( POW の高い者は自分の「絶望」に確信しており、低い者は移り気であることを示している。)

 〈神秘主義〉が〈哲学(何らか)〉の技能値を超えると、超えた値だけ毎週、自殺する可能性がある。酒や麻薬で正体を失うことによって、このロールを一日だけ引き伸ばすことができる。その場合、酒や麻薬によるペナルティはそれぞれのルールに従って受けること。

 〈諦観〉は、《返術》・《禁術》の「強度」を高めるために使われる。ロールは同時に行い、技能値の値の低い方を基準にする。
 《返術》・《禁術》の「強度」を高めるために〈諦観〉を用いる場合、この経験によって〈諦観〉の値を上げることはできない。

 〈諦観〉には、人の琴線を震わせる力があり、〈読み書き〉と同時に用いてシニカルな文章を書いたり、〈雄弁〉と同時に用いて相手に畏怖を抱かせたりすることができる。
 〈諦観〉を知る者は殺人に躊躇がなく、〈諦観〉の成功率以内で振られた〈攻撃〉は効果的成功となる。だが、〈諦観〉の効果的成功率以内で振られた〈攻撃〉が決定的成功となるわけではない。

 以下に、「絶望」と「希望」を引き起こす事例を挙げる。表にある最大値と POW の現在値とで抵抗ロールを行い、失敗した場合にそれぞれ所定の値を得る。成功しても値を得る事例もある。「絶望」を引き起こす死体には、自ら殺した者も含まれる。抵抗ロールでは常に20分の1の確率で失敗するため、たとえば戦争では「絶望」を引き起こしやすい。また、拷問は己以外に何の犠牲もなく、容易に「絶望」を引き起こすので、意図的な〈諦観〉習得のために多用される。


成功 / 失敗 最大 「絶望」を引き起こす出来事   成功 / 失敗 最大 「希望」を引き起こす出来事
0 / 1D 2-1 1 左遷、降格、減給などあらゆる嫌なこと 0 / 1D 2-1 1 名前を呼んでもらう
0 / 1D 2 2 切り刻まれた動物の死骸を見て驚く 0 / 1D 2 2 何らかの美しさに感動する
0 / 1D 3 3 人間の死体を見て驚く 0 / 1D 3 3 他人に献身的に世話をされる
0 / 1D 4 4 川に血が流れているのを見る 0 / 1D 6 6 誰かから愛されていることを確信する
0 / 1D 4+1 5 切り刻まれた人間の死体を見て驚く 1 / 1D10 10 自分が奇跡的に生還する
0 / 1D 6 6 近しい人の非業の死を目撃する  
1 / 1D8 8 信頼していた人に裏切られる  
1 / 1D10 10 ひどい拷問を受ける  


〈哲学(何らか)〉 知識分野 (05%)

 ここでいう〈哲学〉は、グローランサでは一般に〈カルト知識〉のことである。
 〈神秘主義〉は大きな真実と大きな快楽を、〈諦観〉もまた大きな真実と大きな絶望をもたらすが、それゆえにこれらを得た者はこれらと現実とのギャップに苛まされることになる。多くの哲学や神話はこのギャップに論理的な解釈を与えており、彼らを現実につなぎとめている。
 〈哲学〉を上回って〈神秘主義〉を知る者は、その超えた値パーセント分だけ、毎週、精神に異常をきたす可能性がある。身体は現世にありながら、精神が向こう側へ行ってしまうのである。このような「狂者」は近代以前のほとんどすべての社会で「神に愛された者」として寛容に扱われるが、ゲーム的にはプレイ続行不可能となる。(他のキャラクターによる「狂気」を癒そうとする試みは可能。)
 〈哲学〉を上回って〈諦観〉を知る者は、その超えた値パーセント分だけ、毎週、自殺する可能性がある。ついに、自分までもが無意味な存在であることを悟るゆえである。何らかの形で「復活」がある世界で自殺する者は、そのような「復活」では救われないような「自殺」を図るため、救いようがない。
 〈哲学〉はそれぞれ学派の慣用に従って訓練・研究ができる。カルトによっては知識が門外不出の場合もあり、そのような場合は研究もできない。


〈抱一〉 魔術分野 (00%)

 〈抱一〉は、魔道の〈合成〉と同じように、悟法魔術を同時に使用するときに用いる。
 〈抱一〉は、より複雑な「世界の再構成」もしくは「世界の否定」を想像するための知的トレーニングである。
 ゲーム的には、とくに悟法魔術の「時間」や「距離」に関する操作は《禁術》で行われるため、これらの操作をするときには必ず〈抱一〉を同時に適用することが必要である。
 〈抱一〉は、〈神秘主義〉を教えているところでなら訓練することができるし、自ら研究することもできる。


〈啓発知識〉 知識分野 (00%)

 グローランサでは、〈啓発知識〉とはグバージに始まる、人間の善悪の根幹を破壊し、混沌を許容させる悪しき知識とみなされている。
 ここではその見方も正しいが、〈啓発知識〉の一面しか捉えていない、と言っておく。「悟法」においては、〈神秘主義〉や〈諦観〉は「世界の真実」を合理論的に解こうとする試みであるのに対し、〈啓発知識〉は経験論的に解こうとする試みである。
 〈啓発知識〉を知る者は、その技能値以内で「悟法」の実践である《返術》と《禁術》を鍛えることができる。
 〈啓発知識〉はふつう、ルナー帝国で行われているように、謎かけ師がする質問によって 1% ずつ獲得していく。また、書物による獲得もできる(イメージは『クトゥルフ』の書物)。それ以外の、通常の研究や訓練では〈啓発知識〉を鍛えることはできない。


《返術》 魔術分野 (00%)

 《返術》は、相手にかけられた呪文をそのまま返すほか、物理的な攻撃や、さらには誘惑などこちらに向けられるあらゆるものを返すことができる。
 呪文を返すときには、まず《返術》の成功ロールを行い、相手の呪文(と増幅分)の魔力と、こちらの《返術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、呪文をそれをかけた者に効力を及ぼす。(そのとき彼は「抵抗」することはできる。)
 物理的攻撃を返すときには、まず《返術》の成功ロールを行い、相手の与えるダメージと、こちらの《返術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、攻撃した者がダメージを受ける。(そのとき彼の AP は有効だが、〈受け〉や〈回避〉はできない。)
 〈言いくるめ〉などを返すときには、まず《返術》の成功ロールを行い、相手の技能値の5分の1と、こちらの《返術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、こちらを騙そうとした者が騙しおおせた、と騙される。(そのとき彼は INT×5 ロールで気づくことができる。)
 このように、《返術》は大体において「強度」を上げておかないと使えない。「強度」を上げるには一定の SR が必要なので、戦闘においては初撃は覚悟する必要があるかもしれない。《返術》は、いったん「強度」を十分と思うまで上げておけば、「構え」ておくことができる。この「構え」は悟法の持続時間である10分間もつが、「構え」ている間はゆっくり移動することくらいしかできない。この「構え」られた《返術》を、相手のどのようなアクションに向かって返してもかまわない。
 《返術》を呪付することもできる。これは、呪付儀式であり、POWを1捧げて、〈呪付〉と同時適用する。例えば魔道呪文のみに作用する、などの条件をつけることもできるが、その場合は追加分のPOWを捧げること。
 《返術》は、〈神秘主義〉を教えているところでなら訓練することができるし、自ら研究することもできる。


《禁術》 魔術分野 (00%)

 《禁術》にはさまざまな使い方があるが、主として、「距離」や「時間」といったものを「否定」して悟法を操作する、相手のHPや物体のAPなどを「否定」して直接的なダメージを与える、相手の呪文を「否定」して無効にする、相手の攻撃を「否定」して無効にする、相手の技能を「否定」して無効にする、自分の能力値を「否定」して姿を消したり飛んだりする、火を「否定」して消火したり火を起こしたりする、風を「否定」して風を弱めたり強めたりする、などがある。
 悟法を操作するときには、「距離」や「時間」の増幅分を決めて、「距離」や「時間」を増幅しようとする悟法魔術と、この「距離」や「時間」の《禁術》、〈抱一〉で同時にロールする。増幅される「距離」や「時間」は魔道のそれに等しい。
 直接的なダメージときには、まず《禁術》の成功ロールを行い、対象となる相手の能力値やHP、APと、こちらの《禁術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、対象は《禁術》の強度に比例した値を失う。
 相手の呪文を無効にするときには、まず《禁術》の成功ロールを行い、相手の呪文(と増幅分)の魔力と、こちらの《禁術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、相手の呪文は無効になる。
 相手の攻撃を無効にするときには、まず《禁術》の成功ロールを行い、相手の与えるダメージと、こちらの《禁術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、相手の攻撃は無効になる。
 自分の能力値や技能値を上げたり下げたりするときには、《禁術》の成功ロールを行うだけでよい。能力値は強度分、技能値は強度×5%だけ上げ下げできる。特殊な例として、POWはマイナスになるごとに5%ずつ相手に気づかれなくなる(-20で、実質的に「透明」になる)。SIZがマイナスになった場合、元の自分のSIZと同じだけマイナスになると移動力3で「飛行」できる(元の自分のサイズの3分の1なら、移動力1)。APPは増減幅が10を超えると、本人だと思われなくなる。術者は、自らが「否定」した「自らの有様」が「あるいはそうでない」ことも「知って」おり、呪文の効果時間以内でも、いつでも呪文の効果を停止させることができる(術者でない者は「知らない」ため、受けたダメージが回復したりはしない)。
 火や風などの自然現象を操作するには、まず《返術》の成功ロールを行い、火や風の強度と、こちらの《返術》(と強度分)の魔力で抵抗ロールを行う。双方に成功すれば、一段階だけその自然現象を増減できる。
 そのほか、《禁術》はほとんどありとあらゆることに適用できる。
 このように、《禁術》を生物に使うときにはふつう、「強度」を上げておかないと使えない。「強度」を上げるには一定の SR が必要なので、戦闘においては初撃は覚悟する必要があるかもしれない。《禁術》は、いったん「強度」を十分と思うまで上げておけば、「構え」ておくことができる。この「構え」は悟法の持続時間である10分間もつが、「構え」ている間はゆっくり移動することくらいしかできない。この「構え」られた《返術》を、相手のどのようなアクションに向かって返してもかまわない。
 《禁術》を呪付することはできず、永続的な効果は「時間」を操作することによってのみ得られる。
 《禁術》は、〈神秘主義〉を教えているところでなら訓練することができるし、自ら研究することもできる。


超越的存在との取引

 神教社会では悟法魔術は受け入れられていないが、「世界の在り方」に干渉する〈神秘主義〉は神教の神々の感知するところとなる。実際のところ、神々は人間が「世界の在り方」に干渉するのを喜んではおらず、穏当に「取り引き」という形で手を引かせようとするが、〈神秘主義〉を行う人間はこれを「神々の恩寵」と勘違いしている。
 〈神秘主義〉を行う人間に接触してくる神は、その人間がいまいる領域を管轄している神である。火のそばなら火の神々のどれかであるし、山の上なら風の神々のどれかである。〈神秘主義〉によって「神々の恩寵」を得ようとする者は、目的とする「恩寵」を与えてくれる神を呼び出すため、場所、日時、道具をその神に合わせてセッティングする。
 神々はまず、富貴をもちかける。〈神秘主義〉1%につき1000ペニーに相当する物品である。某の姫を得たい、というのであればその姫の身代金に基づいて求められる。
 次に、精霊魔術を強度1につき〈神秘主義〉5%か、神性魔術(一回限り)をポイント1につき〈神秘主義〉10%と交換しようと持ちかける。
 さらなる別の何かを求めようとする不遜な者は、神々の機嫌を損ねるかもしれない、というリスクを覚悟する必要がある。だが、そうすることでしかありふれた富貴や呪文以外の、「秘された知識」を得ることはできない。これはひとつのヒーロークエストの形である。
 残念ながら、魔道呪文は精霊魔術や神性魔術のようには簡単に得られない。あえて神々から得ようとするなら、それは「秘された知識」であるし、見えざる神は人間の前には姿を現さない。魔道師が〈神秘主義〉を交換しようとするときは、ふつうリスクから考えて、「秘された知識」を得ようとしてである。魔道師から見れば神々は悪魔であり、「神々の恩寵」は「悪魔の誘惑」となる。
 「秘された知識」には、浴槽のカビを落とすにはどうしたらいいか、といった些細なことから、パルティアン騎射術やトウモロコシの栽培など、社会に重大な変革を引き起こすことまでさまざまにあるが、本質的に神々は〈神秘主義〉によって世界が変革するのを抑制しようとしているのであり、得られる「知識」が交換する〈神秘主義〉より重大な変革をもたらす、ということはありえない。例として、効果的なカビ落しは2%、トウモロコシの栽培方法は100%と交換できる、ということにしておく。
 このような、カルトと寺院でカヴァーされたのではない、異例な神々との接触は、ランカー・マイやポーラリスのような従神、あるいはオーランスのような大神のペルソナの一つとなら1D10のPOWを、オーランスのような大神身のそのものとなら1D100のPOWを消耗させる。