ラリオス
Ralios
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf
輸入品:
セシュネラの鉄、セシュネラの馬、ソッグ市の呪付物、ソッグ市の魔道書、繊維製品、ハンドラの染料、さまざまな奢侈品、川を遡って運ばれるエスロリアの穀物
 
輸出品:
ぼったくり [Bad Deal] 峠のモスタリの製品、セイフェルスターの手工業製品、ウルフハウンド(ジェナーテラの他の地域で猟犬として評価されている)、タニアー猫(マニリアのオーランス人がペットとして珍重している)をはじめとするエスロリア向けの動物、バラ水

 ラリオスはほとんど断絶した2つの経済圏を抱えている。セイフェルスターの諸都市は洗練された都市文化の中心地であり、ジェナーテラでもっとも熟練している職人たちが住んでいる。一方、ヴェスモントランや東部原野の諸部族はほとんど自給自足の生活を送っており、半ば孤立している。セイフェルスターにおける交易は都市に依存しており、フェルスター湖を中心にめぐっている。ヴェスモントランや東部原野における交易は非常に小規模で、部族組織に付随したものである[。つまり、部族が宗教などの理由で集まったときにのみ交換が行われ、市場と呼べるものが成立する]。

 セイフェルスターは国際交易で殷賑を極めている。セイフェルスターの職人ギルドが製造した商品は船でジェナーテラ全域に運ばれる。製品には、シラーン [Syran] のガラス製品、トルトゥン [Tortun] のレイピアとダガー、アズィロス [Azilos] の金属製品、ティスコス [Tiskos] の家具、ティナロス [Tinaros] のタペストリーと毛氈、フィーシヴェ [Fiesive] の玩具と機械時計などがある。ギルドの頭目はこの地域に関する政治決定に発言力を持っている。

 ドローム [Drom] の商人はハンドラとの交易だけでなく、バシーム族との取引でも利益をあげている。バシーム族は彼らにミスラリ山脈の西半分のほとんどの地域での[銅山の]開発を許している。ドロームの商人たちは銅鉱山を経営し、銅鉱石をハンドラを通じてマニリアに商っている。

 フィーシヴェの商人はぼったくり峠との河川交易を独占し、勢威を振るっている。このモスタリとの長い付き合いによって、フィーシヴェの機械工は世界でもっとも高い技術力を保っている。時計をつくることができるフィーシヴェはラリオスでもっとも傑出し[た技術力を誇っ]ており、セシュネラを含めてもそうである(1)。フィーシヴェの時計はクラロレラを除くジェナーテラ中で売られている。クラロレラの地方の人々は一般に機械に関心を持たない(2)
 フィーシヴェはヴェスモントランの地域的交易網の中心地でもある。キルウィン [Kilwin] は東方原野において同様の役割を果たしている。両市の商人たちは辺地を、庄から庄へ、地方市から地方市へと歩き回る。羊毛を第一として、他にわずかな手芸品や動物が両市にもたらされて、セイフェルスターへ輸出される。ランクスト [Lankst] の地の氏族の民は猟犬として高い需要があるウルフハウンドの飼育に乗り出している。この犬はふつう、輸出する前にフィーシヴェに卸される。

 ラリオスを他の地域と結ぶの交易路では二つが主要なものとなっている。一方は、セシュネラへ至るタニアー川で、セシュネラにはフロネラとの交易に携わるブローカーもいる。もう一方は、ハンドラへ至る河川ルートで、ハンドラからケタエラやさらに遠方へと抜けていく。ハンドラへのルートはこの街の染料を仕入れる上でも重要である。大開放の以前は、ニーダン山脈やハイ・ラーマ峠に至る河川ルートがフロネラへの主要な交易路であった。このルートはぼったくり峠のモスタリとの交易のために今でも重要であるが、水上輸送の低コストとハイ・ラーマ峠の人々が課す法外な関税(3)がラリオスの対フロネラ交易のほとんどをタニアー川と海上を用いる水上交易に追いやっている。

 アーガン・アーガー信者のキャラバン隊はハリキーヴとグーハンを定期的に行ったり来たりしている。こうしたキャラバン隊がラリオス商人に鉛を供給し、この鉛はシラーンのガラス職人や他のさまざまな職人が使っている(4)。冒険的な商人たちもトロウルの製品を転売しようと[トロウルとの接点の]確保に努めている。


  1.   地球の歴史ではしばしば「時計の発明が、近代的人格の形成に貢献した」と言われている。つまり、人々はそれまでのように日単位の生活から、時間単位の生活に切り替わったのである。このような感覚が工業社会には不可欠である。このように、時計という存在はフィーシヴェの技術力を示すだけでなく、もっと重大な意義を持っている。私としては、フィーシヴェの時計が日時計より役に立たない代物であることを祈るばかりである。

  2.   中国をはじめとするアジア社会で自発的に西欧的な工業社会が現出しなかったのは、彼らが科学に無関心であったからではなく、必要がなかったからである。たとえば日本では、16世紀後半には世界最高の鉄砲製造技術を持っていたが、江戸時代の平和はこの技術を必要とせず、パーカションロック銃やフリントロック銃を発明した人もいたが、こうした発明は普及することなく消えていった。
     逆に、19世紀を指して、トルコの歴史学者ウズンチャルシュル [Uzuncharshli] 教授は「西欧、アメリカ、ロシア、日本以外の全世界において、19世紀は非工業化時代となった」と言っている。西欧の重商主義政策がアジア諸国の工業を壊滅させたのであり、むしろ重商主義という発明が西欧をして特異たらしめていると思われる(西欧型「近代」は歴史上の必然ではなく、特異点である、という視点)。
     それはさておき、もしクラロレラ人がフィーシヴェの時計を買わないとすれば、それは彼らが同程度ないしより優れた時計を自作しているか、フィーシヴェの時計が彼らの時刻制度に合わないか、この精密機械が長い航海に耐えられないためであろう。

  3.   ハイ・ラーマ峠の人々が関税を引き下げないのは、それでも利用者がいるからであろう。それには、徒歩や馬ではハイ・ラーマ峠を越えた方がペローリアに早く達する、ぼったくり峠で中継貿易ができる、船舶を航行不能にさせる冬がフロネラではひときわ長い、などの理由が考えられる。

  4.   3-3 金属 にも書いたが、ガラスの組成中に酸化鉛を含ませるとクリスタルガラスをつくることができる。クリスタルガラスは光の屈折率が大きいので、クリスタル食器だけでなく、レンズにも使われる。ただし、時計のように、レンズを用いた天体望遠鏡や顕微鏡といった発明品は人々の意識を大きく変えるので、レンズの導入には慎重でありたい。