Gerald Bosch, Trade in Genertela, 1994; Coinage |
貨幣制度 |
Coinage |
http://www2u.biglobe.ne.jp/~BLUEMAGI/TradeinGlorantha.pdf |
ジェナーテラには4種類の貨幣制度が並存している。すなわち、イサリーズのもの、エティーリーズのもの、西方のもの、ロカーノウスのものである(1)。各交易寺院は、ロカーノウスを嚆矢として、交易を簡便ならしめるためにそれぞれ貨幣制度を考案した。地球の通貨と異なり、グローランサの通貨はふつうそれぞれの交易寺院で鋳造され(2)、人々は長距離交易のための交換媒体として[のみ貨幣を]用いている(3)。こうした貨幣の使用状況はジェナーテラの貨幣流通システムの安定に貢献している。
ロカーノウスによって考案された金輪貨はグローランサで最も古い実体貨幣であり(4)、太陽信仰が支配的な地域では金輪貨のみが公式の交換媒体となっている(ロカーノウスの司祭は17世紀のヨーロッパ人のように信用状や紙幣を紙切れと見なしている)。金輪貨はわりと大きな金貨で、貨幣をロカーノウスの荷車の車輪に見立てて表面に車轂、車輻、外輪を描いている。金輪貨はクラロレラやテシュノスで使われている唯一の貨幣であり(5)、ペローリアでもエティーリーズの発行する貨幣と並んで広く出回っている。
金輪貨をより柔軟な交換媒体にするために、ロカーノウスの商人をはじめ、一般に、金輪貨から[中央の]車轂部とその他を分け、さらに車轂から出ている10本の車輻に沿ってカットした楔形の欠片にしている(これには外輪部の欠片も付随する)。それぞれの車輻はギルダー銀貨ないしルナー銀貨と等価であり、車轂部は車輻10本分と等価である。
[ロカーノウスより]新しい神であるイサリーズはロカーノウスの発明に[金輪貨に限らず]それ自身として持つ可能性を見出した。彼はその魅力的な仕草と黄金の舌でもって、さまざまなエレメンタルの神々に自分が貨幣をつくる上で銅、銀、金を使うことを承認してもらおうと努めた。彼はロカーノウスに独自の金貨を作ることさえ認めさせてしまった。彼はこの金貨を金輪貨と等しい重さ、等しい合金比率で、文様だけ変えるつもりでいた。今日でも、ロカーノウスの商人は他の貨幣制度の金貨が[金輪貨と]等価であることを許容している。曙の時代の第一評議会のゼイヤラン人使節団は西方に赴く際、イサリーズの貨幣制度も[西方に]持ち込むことになった。今日にいたるまで、西方の一神教徒たちはイサリーズの貨幣制度をそれぞれの土地にあわせて使いつづけている。エティーリーズのカルトはルナー帝国とともに興ったが、このとき彼らはイサリーズの貨幣制度を受け入れながらも、その文様を変えることで、変化と安定の均衡というルナーの道を[この独自の貨幣制度にも]当てはめている。
もっとも小額の貨幣はクラックと呼ばれる小さい銅貨で、片方にはコミュニケーション(あるいはイサリーズ)のルーン、もう片方には調和のルーンが描かれている。エティーリーズの[銅貨]もクラックと呼ばれるが、コミュニケーションのルーンの代わりにルナーのルーンが描かれている(すべてのエティーリーズの貨幣には片面にルナーのルーンが描かれているが、これは西方の慣習の借用である)。西方の[銅貨]はコッパーと呼ばれていて、片面には法のルーンが描かれ(他の貨幣も同様)、もう片方にはその地方の権力者の意匠(ふつう貴族の紋章か、市の紋章)が描かれている。
次に額面の大きな銅貨はツリーと呼ばれるもので、5クラックの価値がある。これには片面に大地のルーン、もう片面にはその貨幣が鋳造された土地で一般的な樹木の図柄が描かれている。エティーリーズのものはキャッスルと呼ばれており、片面にはルナーのルーン、もう片面には青の城の様式化された図が描かれている。西方のものは、フロネラではとくに流通しているが、片面に城を描いており、キャッスルと呼ばれている。ここでもエティーリーズは西方からの借用をしており、おそらくこれはカルマニアの貨幣図案であったと思われる。
額面の小さい方の銀貨はギルダーと呼ばれていて、10クラックの価値がある。片面にはふつう、その貨幣が鋳造された時代のその地域の上位の貴族が描かれる。もう片面にはふつう、その貨幣を鋳造した銀細工師ギルドの紋章が描かれる。エティーリーズのものはルナーと呼ばれており、片面には第一次混沌会戦における女神の勝利が描かれている。西方のものはペニーと呼ばれていて、ふつう片面にはそれを打鋳させた政治的権力者の意匠が描かれている。
額面の大きい方の銀貨はストームと呼ばれていて、100クラックの価値がある。片面にはイサリーズのルーンが描かれ、もう片面には嵐のルーンが描かれている。ライトブリンガーの伝説を信じない人々は、嵐のルーンを削ってからこの貨幣を使おうとする(6)。エティーリーズのものはドーターと呼ばれており、ふつう片面には赤の女神の娘たちのうちの一人が描かれている。西方のものはソヴリンと呼ばれており、ふつうその地方の君主が描かれている。
イサリーズの金貨はサンと呼ばれていて、200クラックないし1ホイールの価値がある。これの片面には金輪貨と同様に車轂とそこから放射状に広がる車輻の図柄を描いているが、この図柄は車輪というより太陽を表していて、この名がある。もう片面には移動のルーンが描かれている。ロカーノウスの信者は自分たちの神のルーンとの関係からこの貨幣を喜んで使うが、ライトブリンガーを信じる者たちはこの図案をライトブリンガーの探索行の成功に結び付けて考えており、やはりこの貨幣を喜んで使っている。エティーリーズのものはつねに今上の皇帝が描かれており、これをインペリアルと呼んでいる。西方のものはゴールデンと呼ばれていて、その地方の君主が図柄にと望む偉大な功績(戦勝や業績など)を描いている。
貨幣に関する覚書:地球では悪銭が正貨として広く出回っていた。金貨や銀貨は貨幣を増やそうという意図からやすりでこすられたり、他のメダルと合わせて改鋳されたりした。権力者はふつう、公式な極刑や内密の私刑をもってこの問題に臨んでいた。グローランサでも、西方のように交易カルトが不在の地域では同じやり方で法の施行が行われるのが一般的である。[だが、]このような措置は交易カルトが活動的な地域では不要である。なぜならば、ロカーノウス、イサリーズ、エティーリーズの入信者やより上位の者たちは、削られたり不純物が混じった貨幣を手にとればそれを検知できるからである。ただし、アーガン・アーガーの信者はふつうボルグを削ったり改鋳したりすることを気にとめない(7)。
|